その手で触れて確かめて
第4章 戸惑う唇(O × S)
「こんなところに寝たら風邪引くよ?」
もう、ほとんど朦朧としている意識の中で、翔からかけられた言葉さえうろ覚えで、
それでも目覚めた時、ベッドの中にいたんだから、
ベッドで寝たことには違いないんだろうと思った。
でも、まさか、
翔まで同じベッドの中にいたなんて思いもよらなくて、
はっきりそうだと分かった時には、
ほんの数秒間だけど、
唇に温かくて柔らかい感触と、
翔がこの時期いつも好んで付けているミントの香りのリップクリーム。
その味と香りが唇に残っていた。
恐る恐る目を開けると、
膝を抱え、背中を丸めるような姿勢で寝息をたてている翔の姿があった。
まさか………。
唇の上に仄かに残された痕跡を確認するように指先で辿ってみる。
どうしよう…?
朝、顔を合わせたらどんな顔をしたらいいんだろう?
どんな言葉をかけたらいいんだろう?
そもそも、自分はどうすればいいんだろう?
もしかしたら、
翔は、好奇心からしてみたかっただけで、
キスしたこと自体重く考えてないかもしれない、
或いは、寝惚けていただけなのかもしれない、と、
自分にそう言い聞かせてから、
再び目を閉じた。
朝、目が覚めると、
隣で気持ち良さそうに寝息をたてている翔を起こさないようにベッドから抜け出し、
制服に着替えて階下に降りた。
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