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その手で触れて確かめて

第4章  戸惑う唇(O × S)



昼休み。


いつものように窓際の席で六法全書を読んでいた。


親父には言えないけど、


弁護士になりたい、って夢があって、



昔見ていたテレビドラマで、勝ち目のない裁判を見事にひっくり返した弁護士の話に夢中になってしまって、


録画して何度も見ていた。


翔も潤も知ってる。



でも、親父は知らない。


長男だから当然、跡を継ぐものだ、と思われているから、



聞いてもこない。



だから、早い段階から夢なんて諦めてた。



そんなことをぼんやり考えていたらチャイムが鳴って、


俄に教室は賑やかになる。



「よっ!!どうした、智?ボケッとして?」



腹も満たされ、ハイテンションな岡田を一瞥し、

また、窓外に目を戻す。


「おいおい、つれないなあ♪ま、そこがいいんだけど?」



どさくさで、肩を抱こうとしてくる岡田の手をはたき落とした。



「お前、今日は一段とエロい顔してるじゃないか?」


「は?エロい顔?」



こいつにしてみたら、俺の顔なんて、


普通にしててもエロく見えんだろが!?



「何だ。やっぱ、無意識だったのか?」



俺、何かしてた、っけ?


「お前、ずっと唇触ってたぞ?」



「えっ…?」






ウソ…だろ?


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