飴と鞭と甘いワナ
第4章 scene Ⅳ
N side
これは熱のせいだ。
熱があるから、頭が上手く働かないんだ。
だけど弱ってる時ってさ、どこか人恋しくなるんだよ。
弱いとこ見せたくないって思う反面、喜んでる自分がいるんだから。
薬が飲み終わっても、離れたくなくて
俺からねだった。
怠くて体が起こせないのもあるけど
支えてくれる腕が力強くて。
溢さないようにと、丁寧に唇を重ねる雅紀が
やたらカッコ良く見えて。
何だろうなぁ…
さっきは俺に蹴り倒されたくせに、すぐに立ち直っちゃうし。
雅紀の首に回した腕も、本当は力が入らない。
…それに気付いたのか、はたまた本能なのか
雅紀は俺を抱き抱えると
ペットボトル1本を
全て口移しで飲ませてくれた。
溢れた液体が顎を伝う。
…それを、雅紀が唇で拭った。
飲むものがなくなっても、雅紀は離れていかなくて。
俺も、離したくなくて。
雅紀のぬくもりが心地好い。
時々触れるようなキスが、安心する。
「…大丈夫?」
囁くような声が、嬉しい。
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