じんちょうげの花咲く頃
第1章 じんちょうげの花咲く頃、君と出会う。
母さんが無言の帰宅をした日、
東京から叔母さんが駆けつけてくれた。
叔母さんは僕の姿を見ると、僕を抱きしめ、声を押し殺すように泣いた。
叔母さんと母さんは、僕が生まれる前からの付き合いで、
育児については何かと母さんから相談を受けたりしていて、母さんにとってはよき相談相手だった。
「零くん、大変だったわね?」
と、叔母さんは、ハンカチで泣き腫らした目元を拭いながら、
叔父さんは仕事を調整し、お通夜には間に合うように来てくれると告げた。
「零ちゃん…」
そして、叔母さんの隣には、
叔母さんの一人娘で僕の従姉のめぐむちゃんが、
叔母さん譲りの大きな目を潤ませ立ち尽くしていた。
「おば様が亡くなった、って、零ちゃんのお母さまが亡くなった、って聞いて…」
めぐむちゃんは大粒の涙を溢しながらわんわん泣き出してしまった。
「もう、めぐむ、ったら。零くんがびっくりしてるじゃない?」
「だ…だって…零ちゃんが…零ちゃんが…」
僕より一つ年上のめぐむちゃんは、
困り顔の叔母さんの腕の中で、
泣き疲れて眠るまでずっと声を上げて泣き続けた。
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