じんちょうげの花咲く頃
第6章 エピローグ ①
大野のお祖父ちゃんは、医者に止められているにも関わらずここに来ると最後までごねていたらしいが、結局は断念した。
しかも、ある条件を突き付けたらあっさり引き下がったという。
その条件というのが気になったけど、大野のお祖父ちゃんにとっては余程魅力的だったみたいだ。
翔「それにもっと凄いことがあるんだけど、今まだ…」
と、叔父さんはニコッと笑った。
何だろう?と思っていると、
セレモニー会館の前に一台のタクシーが止まった。
僕は、その中から降りてくる人影を見て息を飲んだ。
一人は、父さん。
その後ろには樹里さんとおぼしき女性が続いた。
そしてもっと驚くべきは、
父さんの腕の中に、黒いワンピースを着た小さな女の子がちょこんと収まっていた。
翔「…碧(あお)ちゃんだ。」
驚きのあまり立ち竦んでいる僕の背中を叔父さんがそっと押す。
歩み寄る僕の姿に気づいた父さんが、腕の中の碧に何やら語りかけると、漆黒の小さなおかっぱ頭がこちらを向いた。
黒目がちの大きな目の印象的な少女がじっとこちらを見つめる。
僕の一挙手一投足を見逃すまいとじっと見つめる。
そんな碧の傍に樹里さんが近づき囁く。
樹「碧、あなたのお兄さんよ?ご挨拶は?」
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