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じんちょうげの花咲く頃

第6章 エピローグ ①



僕は、すべてのものを見透すような瞳に吸い寄せられるように一歩づつ碧に近づいてゆく。




そして、僕から視線を逸らすことなくじっと見つめたままの彼女の目の前で立ちどまった。



父さんは腕の中の碧を降ろし、僕の傍に行くようそっと肩を押した。



覚束ない足取りで近づいてくる碧に、僕は少し歩を早めて近づく。



そして、



碧が歩を止めた場所から、小さな彼女が威圧感を感じない位置まで近づき、



彼女の目の前で膝まづいた。



なんの濁りもない、綺麗な目。



僕はその綺麗な目に映り込んだ自分の姿を見ながら彼女に笑いかけた。



「初めまして、碧。僕の名前は零。君のお兄ちゃんだよ?」


碧「お兄……ちゃん?」


小首を傾げた碧の瞳の中には変わらず僕の姿が映ってる。



碧、僕は君の目にはどう映っているのかな?



すると、碧は急にふぅーっと息を吸い込み、まるで幼稚園の先生の質問に答えるみたいに元気よくこう言った。



碧「おにいちゃん、はじめまして、おおのあおです!!」



黒い絹糸のようなサラサラのおかっぱ頭をいきなりガバッ、と直角に下げた。



顔をあげると、丸い頬をピンク色に染めながら、碧ははにかむように笑った。


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