じんちょうげの花咲く頃
第6章 エピローグ ①
「こちらこそ。よろしく、碧。」
僕らから少し離れた場所で微笑む父さんと樹里さんと目が合う。
碧「おにいちゃん、ぱぱとままのところにいこ?」
僕の手に絡められる小さな手。
「連れてってくれるの?」
碧「うん。」
こんなに小さいのに、力強くて温かくて、生きる力を感じる。
僕は、遥々海を越えて会いに来てくれた、幼い妹の小さな手を握りしめた。
「そ、そんな…」
翔「…すまん。力不足で。」
葬儀一切が終わり、母屋に戻ってきた僕は、
おばあちゃんと母さんと過ごしたこの思い出の家が人手に渡ると聞かされ、
驚きと落胆を隠せないでいた。
め「パパ、なんとかならないの?」
澪「そうよ。あなたの力でもってすればそれぐらいどうにかなるでしょ?」
翔「あのな…」
二人に意見しようと叔父さんが口を開きかけた時だった。
智「翔を責めるのはお門違いだ。」
「父さん?」
翔「兄さん…。」
智「零。お前も春から一人前の社会人だ。いつまで翔たちに甘えるつもりなんだ?」
「あ、甘えてなんか…」
智「この家が人手に渡るのがイヤなら自分でどうにかすればいいだろ?」
翔「ちょっと、何もそんな言い方しなくても…」
なにも言い返せなくて、
僕は唇を噛みしめ俯くしかなかった。
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