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じんちょうげの花咲く頃

第6章 エピローグ ①



碧の言葉にギクリとした。



碧「そしたら、らいねんも、またその次も、またその次も、ずーっとここに見に来るのに…」



この家は間もなく人手に渡ってしまう。



だから、碧の言う来年にはもうこの花はここで見ることは叶わないだろう。



「あのね、碧…。」


碧「ずっーとお兄ちゃんにも会えるのに…」



彼女にとって、どちらが口実なのかは分からない。



でも、この花は彼女の住む南国には咲かないけれど、日本のどこかで見ることはできるだろう。



彼女の側に僕でない、誰かがいたとしても。





でも、碧は来年、この場所で見ることを望んでいる。



僕と…この場所で見ることを望んでいる。



もしかしたら、



母さんやおばあちゃん、みんなが僕の居場所を守ってくれたように、



今度は僕が誰かの居場所を守る番が来たのかもしれない。



もし、今がその時なら、



僕が碧の居場所を、



君がまた帰ってきたい、と言っていた場所を、



僕が守ってやらなければ、と思った。





「ねぇ、碧。」



おかっぱ頭がくるり、とこちらを向く。



「来年もここで、お兄ちゃんとこの花を見よう。」


碧「ほんと?」


「うん。」


碧「じゃあ、約束。」



嬉しそうに差し出された小さな小指に僕の小指をぎゅっと絡めた。





翔「お金を貸してほしい?」


「はい。何年かかっても必ず返しますから。」




碧や父さんたちが見守る中、



僕は必死で叔父さんに頭を下げ続けた。


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