じんちょうげの花咲く頃
第7章 エピローグ ②
零を頼む、と言われて、俺は何も返せなかった。
零には長年会社を継がせたい、と思ってきた。
その思いだけで、松岡の傘下からようやく抜け出すこともでき、
昔ほどの勢いはなくなったものの、会社は何とか取り戻すことはできた。
だから、あとはもう…
「零が後を継いでくれたら…」
何度目かの手術の前、病院のベッドの上で父さんが言い出した。
「だが、智と違って大人しくて素直だからなあ?本人がうん、と言うかどうか…」
渡りに船とは正にこのことだった。
俺は父さんの言葉に後押しされるように、まずは母親である環を説得した。
初めは、今さら何だ?と何度も追い返されたりもした。
息子の将来を思うなら、と札束をちらつかせたりもした。
が、そのうち息子の成長に伴い、色んな現実を目の当たりにした環はとうとう折れた。
俯き、屈辱にうち震える環を見るのはあまりいい気はしなかったが、これも零のため、と自分に言い聞かせた。
そして今、本人をも謀っている。
その父親である智をも巻き込んで。
智「あんまり長い時間外してると皆変に思うぞ?」
もう戻ろう、と、智は俺の肩に手を置いた。
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