じんちょうげの花咲く頃
第7章 エピローグ ②
後日、零に成海家の土地建物など不動産の名義が、零の名前に書き替えられた書類一式を、いつでもいいから、との言葉と共に零に渡した。
すると零は、
「だめです。ちゃんと期限も切って、利子もとってください。」
と、強い口調で言った。
田舎とは言え、広大な農地を抱えていた成海家。
大学を出たばかりの若僧に耳を揃えていつまでに返済しろ、などと言える額ではない。
それを智は、甘やかすな、と、
自分から言い出したのだから、一人前の大人として扱え、などと切り捨てた。
そして、返済が叶わなかった時の条件として、俺の下で働くように仕向けろ、と。
そんな中、めぐむが零と籍を入れ、一緒に借金を返すと言い出した。
結婚して家族になれば、零の負担が減る。
二人で力を合わせて返済するから結婚を許してほしい、と。
もちろん、二人の結婚を反対する気なんて毛頭ない。
むしろ両手を上げて万々歳だ。
反対ではないが、時期ではない。
零が、俺と智が仕組んだ罠に上手く引っ掛かってくれたらの話だ。
それならば、零さえうんと言うならば、養子にくれてやっても構わない、と、智は言った。
犬や猫の仔を欲しがるみたいに俺の息子を欲しがるな、と言っていたクセに、だ。
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