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じんちょうげの花咲く頃

第7章 エピローグ ②



あれから碧は毎年日本を訪れている。



自分との約束をはたしてくれた兄に会うため、



春の足音が聞こえ始めた頃、芳しい香りを放つ沈丁花の花が咲く季節に。



そんな彼女ももう十六歳。



夢は弁護士になることだそう。



そう言えば、誰かさんも昔はそんなことを言っていた。



でも、諦めざるを得なかった。



それでも彼は、六法全書を片時も離さず持ち歩き、暇さえあれば読み耽っていた。



その六法全書も、今や娘である彼女の愛読書。



今時の若い娘には珍しく、ファッション雑誌には目もくれず、寝食を忘れて読み耽っているらしい。



若かりし頃の彼を思い出す。



澪「どうしたの?思い出し笑いなんかして?」


「いや、似てるな?と思って?」



今碧が座ってる場所は、昔、智がよく好んで座っていた場所。



まだ、高校生だった智はよくその場所に腰掛け、朝は朝刊に目を通し、



夕飯を食べたあとは六法全書を開いていた。



ファッション雑誌やマンガにだらだらと目を通しているだけの潤と比べ、その落ち着き払った姿は高校生のそれではない。



そんな智を俺は「オッサンじゃん?」と揶揄ったものだ。



あとで智に拳固を喰らってたけど。


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