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じんちょうげの花咲く頃

第7章 エピローグ ②



やがて俺たちの視線に気づいた碧が顔を上げてこちらを見た。



澪「碧ちゃん、一息入れない?」


碧「わあ、美味しそう♪」



碧は目の前に置かれたケーキに目を輝かせた。



澪「あなたも召し上がる?」


「いや…俺はいいよ?」



ぷっくりした丸い頬を膨らませ、おいしいおいしいとケーキを頬張る姿も父親そっくりで、



碧「もう、叔父さま、ったらなあに?」



今度は丸い頬を膨らませたまま唇を尖らせる。



「いや、旨そうに食べてるな?って思ってね?」



そこへ、仕事を終えた零が帰宅し、明日、碧と共に約束の場所へ行く算段を始めた。



零「ところで父さんは元気?」


碧「相変わらず。釣りばっかりしてる。」


零「あはは。父さんの場合、趣味と実益をかねてるからね?」



そうだけど?と碧の頬は益々大きく膨らむ。



すると、碧が急にあ、と声をあげた。



碧「お祖父様にご挨拶するの忘れてた!」



ソファーから飛び降り、リビングを飛び出して行く碧。



そう言えば、碧が初めて日本にやって来た日、手術を終えたばかりの父さんが成海さんの葬儀に顔を出すと言い出した。



言い出したら絶対に曲げない父さんに、大人しく言うことを聞いたら碧に会わせてやる、と言ったら、笑えるぐらいあっさり引き下がった。



が、そんな父さんも、数年前、呆気なくこの世を去った。


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