じんちょうげの花咲く頃
第1章 じんちょうげの花咲く頃、君と出会う。
小学校に上がったばかりの頃、
母さんが甘いものが大好きな僕のために、おばあちゃんから分けてもらったっていうさつまいもを使ったお菓子を作ってくれた。
「初めて作ったから味は保証できないけど?」
と、匂いも見た目も食欲をそそるスウィートポテト。
「わぁ、美味しそう♪」
頂きます、と一口かじると口の中にフワッと上品な甘さが広がった。
「美味しい?」
「うん!美味しい!」
一個目を平らげて、二個目を手にした時だった。
「もう、こんなところに付けちゃって。」
と、母さんが笑いながら僕の口の端っこに付いている食べかすに手を伸ばした。
「お母さん?」
さっきまで笑顔だった母さんの顔から笑顔が消えて、
僕の顔を見ているんだけど、僕を通して誰かを見ているような、
そんな、甘い空気を纏った表情をしていた。
それは、子供ながらにもとても分かりやすくて、思わずどこか具合が悪いのか、と聞いてしまうほどだった。
「ご、ごめんね?疲れてるのかな?」
と、慌てて、仄かに赤みが指した頬を隠すように顔をそらした。
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