じんちょうげの花咲く頃
第1章 じんちょうげの花咲く頃、君と出会う。
間違いない。
あの時の母さんは、
僕を通して父さんを見ていたんだ、って思った。
だって、僕の父さんも甘いものが大好きだったから。
「お前のお父さんも、甘いものに目がなかったんだ。」
小学校に上がって初めて迎える誕生日の前日。
東京の叔父さんがめぐむちゃんを連れて遊びに来ていた。
「俺が食欲がない、って時はミルク粥、っていうそれはそれは甘〜いお粥を食わせてもらったことがあってな?」
膝の上にちょこん、と座って見上げている僕の顔を笑顔で覗き込みながら話してくれた。
「それ、美味しかった?」
「うん。旨かった。」
叔父さんは、ドングリみたいな大きな目を細め微笑んだ。
「いいなあ、しょおちゃんは。僕も食べたい!」
「パパ、めぐもそれ、食べた〜い!!」
と、親鳥にエサを催促する雛鳥みたいに二人で叔父さんを困らせた。
「わ、わかったわかった。じゃ、練習してくるから。」
とは言ったものの、あれから約十年。
その腕前のお披露目はまだなされていない。
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