じんちょうげの花咲く頃
第2章 恋文
好きの形…
が、
『…なんて、嘘。』
さらに、目で追ってゆく。
『好きの形なんて変わるはずがない。変わりようがない。』
母さん…?
『私の気持ちは変わらない。好きの形も変わってはいない。
………私は………
ありのままの彼のことをありのままずっと好きだ。
だから、誰の手によってでも構わない。望む通りの幸せを掴んで欲しい。
……本当なら、それが私の手によってならもっと嬉しかったのだけれども…。』
………。
その日の日記はそこで終わっていた。
樹里……思い出した。
そう言えば、叔父さんから聞いたことがある。
名だたる代議士の娘で、
名も無き島に渡った父さんの後を追い家を捨てた女性の話を。
今では、二人で慎ましやかに暮らしているという。
それから後のページを読み進めていったが、
その女性の名前は出てこなかった。
まるで…
まるで、母さんの、
父さんに宛てたラブレターを読んでいるようだった。
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