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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



閉じた日記を膝の上に乗せたまぼんやりしていると、



後ろにいる人の気配に気づいて振り向く。



「ご、ごめんなさい。食事の支度が出来たから呼んできて?って言われたし…でも、何だか、声かけづらかったから。」



めぐむちゃんだった。



「そうだったんだ?ゴメン」



立ち上がって、日記を段ボール箱にしまった。



「何…見てたの?」


「ん?母さんの日記。」


「そう。真剣に読んでたから。」



二人、連れ立って、台所へと向かう途中、



お風呂場の扉が不自然に開いていることに気づいて足を止めた。



「お母さん?」



そこには、めぐむちゃんのお母さんが、



声を潜め、真剣に電話で話していた。



「あ…ごめんなさい。一端切るわね?」



僕の姿を見た叔母さんは、慌てて電話を切った。



「誰と話してたの?」


「お父さんよ?」



叔母さんは、僕に笑いかけると、背を向け歩き出した。



「お父さん、何て?」


「ん?お通夜には間に合いそうだ、って?」


「ふーん?」


「………」







違う。




多分、だけど、



僕のことを…



僕と父さん、母さんのことについて話していたのだ、と、思った。


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