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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



次の日、



叔父さんは朝イチの便で駆けつけてくれて、



僕の姿を見るや、



大きな瞳を潤ませながら、無言で肩をぽんぽんと叩いた。



「パパ、ママが呼んでる。」


「めぐむも来てたのか。」



また、あとで、と、



叔父さんは奥に消えていった。



「ねぇ、零ちゃん。こんな時に聞いていいのかどうか分からないんだけど。」


と、前置きしたあと、



めぐむちゃんは俯いたまま僕の目の前に立った。



「零ちゃんは、おば様が亡くなったのに悲しくないの?」


「えっ?どうして?」


「だって…私がここに来た時からずっと、零ちゃんの泣いてるところ、見てないから。」



そう言えば…僕…ずっと泣いてない。





もっと、厳密に言えば、



母さんの死を知らされた病院にいた時から泣いていない。



別に、悲しくない訳じゃない。



きっと、急なこと過ぎて実感が湧かないんだ。



目の前に横たわる母さんを見ても、



すっかり冷たくなった母さんの頬に触れても、



もしかしたら、



「ああ、よく寝た。」



なんて言いながら、大きくのびをし、布団の中からむっくり起き上がるんじゃないか、って思ってしまうから、



だから、泣けないんじゃないか、って思うんだ。


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