じんちょうげの花咲く頃
第2章 恋文
こんなになるまで持ってたなんて…。
しかも、折り目が破れてしまうほどに、何度も何度も見返していたなんて。
ネクタイを締めた人物の隣にいる、ヴェールを被った女性らしい人物の絵。
これは…この絵は…
僕の『おとうさん』と『おかあさん』だ。
母さん…大事に持っててくれたんだ。
絵の中の二人を指先でなぞる。
そうだ…!
慌てて、母さんの日記帳を持ち出し、
この間読んだページの次を捲った。
『月日
『おかあさんはどうしておとうさんのおよめさんにならないの?』
この間、零に投げかけられた言葉。
子供なら当然だろう。
父親と母親がなぜ、一緒にいないのか、と。
でも、私はこう答えた。
『えー?なったよ?零のお絵かきの中で。』
そう答えると、そうなの?と、何だか納得いかなさそうに首を傾げていた。
文字通りの子供だまし、だと思った。
今はそれでも誤魔化せる。
誤魔化せるけど、問題はもう少し大きくなった時、
この子にどう説明すればいいのか…。
私たちが一緒にいない理由…
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