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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



零がもしどうしても、って言うなら考えようと思った。



それほどに子どもは可愛い。



可愛いけど…でも、やっぱりダメかなあ。



そんなにあっさり考えを曲げてしまう私のことを、



あの人はどう思うか。



彼のことを今でも好きだ、って気持ちは変わらない。



変わらない、けど、



けど、どうして…



どうして…あの日、私は行けなかったんだろう?





あの人に、一度だけ、零と会わせたあの日、



電話口で私を呼ぶあなたの声に私の足は震えた。





行きたい…





一緒に生きていきたい、って。





今は、あの時ほど強く思わないけど、



零のために、一緒にいればよかった、って思う。



…って、今さら、何、言ってんだか…





そんなこと、生きてたらまた、会えるじゃない?



そう思わなきゃ。うん。



でももし…



どちらかが先に逝ってしまったとしたら、



そうだとしてもまた、会える、って、



また、好きになれる、って思わなきゃ。



あ、いけない。また、湿っぽくなっちゃった。



もう、こんなんじゃ母親失格だ。



しっかりしろ、水澤環!!』

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