じんちょうげの花咲く頃
第2章 恋文
彼らは、
僕の両親は、どうしてこうも頑なだったんだろう?
今ごろになって、どうしてこんなに後悔してるんだろう。
一体、誰のために我慢していたのだろう。
一体、何を守りたかったのだろう。
どうして…
どうして、僕たちは『家族』になれなかったのだろう。
そうまでして、あなたたちは一体、
何をしたかったの?
父さんへの熱い想いを綴った母さんの日記。
でも、それと同じぐらいに後悔の言葉で埋め尽くされていた日記。
そんなに後悔するぐらいなら、
変な意地張らないで一緒になればよかったんだ。
叔父さんから聞いた。
二人は一緒に逃げるつもりだったんだ、って?
三人で生きてゆくつもりだったんだ、って。
それが、どうして、
父さんが急に怖じ気づいたのだ、と。
父さんは幼い頃、遠ざかってゆく実の両親の背中を見ているのだ、と。
だから、今度は、母さんと僕の背中を見たくなかったのではないか、と。
離れるのはイヤだとごねる母さんを説き伏せて去っていこうとしたのだ、と。
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