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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



「零、今なんて?」



叔父さんは、トレードマークの大きな目をさらに大きく見開き僕を見た。



「はい。どうやったらお父さんと会えるのかな?と思って?」



叔父さんは、残り少ないお茶をぐっ、とあおり、湯呑みをローテーブルに音を立てて置いた。



「零、ちょっと…」



手招きしながら廊下に出てゆく叔父さんの後に続く。



「零、実は今日、お前のお父さんをここに何がなんでも連れてくるつもりだったんだ。」


「え……?」


「昨日まで、お前のお父さんと一緒にいたんだ。」



叔父さんが言うには、



出張とは表向きで、



父さんが住んでいるという島に飛んだらしい。



「日本を立つ前に電話で連絡はしていたんだ。なのに、やっぱり行かない、って…。」



すまない、と、



叔父さんは苦し気に顔を歪めた。



「あの時、俺があの人を捕まえられていたら…。」


人混みに消えてしまった父さんの後ろ姿。



その姿を追いかけるように泣き出した僕。



あちらこちら探し回ったけど、



結局、連れ戻すことができなくて、と、



叔父さんは肩を落とした。



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