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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



あの、嬉しい知らせが舞い込んだ数日後、



毎日のように成海のおじいちゃんの墓参りをしていたおばあちゃんの腰の具合がよくなくて、



代わりに僕がシロの散歩がてら行くことにした。





成海家の墓は、



遠くに日本海が見渡せる小高い場所にあって、



最近、腰ばかりでなく膝も、と言い始めたおばあちゃんでなくとも若い僕でさえもちょっとキツいな?と思える場所にあった。



あと少しで辿り着く、という時、



成海家の墓の前で立ち上がったり座ったりする人影に気づく。



気のせいかな?と思ったが、



その人影は遠目から見ても男の人だ、と分かるぐらい長い間、佇んでいた。



もしかして…叔父さん?



に、しても少し背も低いし、



若い頃は、叔父さん本人いわく、それなりに鍛えていたらしいからそれなりの体つきをしていると自慢していたしあんなに細身じゃないはず。



誰…なの?



人見知りの激しいシロが飛びかかっていかないようにリードを短めに持ち、その人影に近づく。



さらに近づくと、



その人の髪は染めているのか赤茶けていて肌も浅黒く、


ちらと見えた横顔も鼻筋がスッと通っていて、



でも、海風に煽られ乱れた髪を整える指先は女の人のように細くて、一見、外国人のように見えなくもない。



その人は、成海のおじいちゃんのお墓の前にしゃがみこむと、



背中を丸めながら手を合わせた。




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