じんちょうげの花咲く頃
第2章 恋文
互いの体温を思い切り懐かしんだ後、
母さんの写真と遺骨が置いてある成海の家へ父さんを連れていった。
「いやぁ智くん、久しぶりやね?」
「ご無沙汰してます。」
おばあちゃんはニコニコと笑いながら父さんにお茶を出した。
「すみません。おじさんの葬儀に出なくて…」
「いいわいね?今ごろ。」
おばあちゃんは、僕の隣に座り、お茶を飲んだ。
「そやけど…」
おばあちゃんは湯飲みを静かに置くと、
真剣な顔つきでお父さんを見た。
「今回だけは、何がなんでも来てほしかったわ。」
「そう……ですね。」
「環ちゃん、亡くなったんやから…」
急激に場の温度が降下してゆく。
「どんな亡くなり方したか、聞いとる?」
「交通事故、としか…」
「ひき逃げされたんよ?」
「え……?」
父さんの目を見て話すおばあちゃんの顔は鬼気迫るものがあって、
正直僕の方が引いてしまった。
「お、おばあちゃん、いいよ?そこまで言わなくて?」
「しかも、しばらくはまだ息あってん。すぐ手当てしとったら助かったかも、って?」
父さんは、
泣きそうな顔で俯いてしまった。
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