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じんちょうげの花咲く頃

第2章 恋文



「おばあちゃん、ほら、父さん、遠路はるばる来てくれたんだから…」


「…そうやな?わざわざ遠いところからこんな辺鄙なところに来てもろたんやからせいぜいゆっくりしていったらいいわ!!」



勢いよく立ち上がると、


おばあちゃんは外へ出ていってしまった。



「父さん、ごめんなさい。」


「いいんだよ?俺が悪いんだし?」


「でも…あんなおばあちゃん、初めて見た。」


「俺は…二度目かな?」


「え?」


「お前たちを置いて日本を離れるとき、電話で。」


寂しそうに笑いながら、一口お茶を飲んだ。



「あんたのお父さんとおなじことするつもりか、って」


「あの…同じこと、って?」


「捨てられたんだよ。実の両親に。」


「あ……。」



だからかもしれない、と、



本当に泣いてしまうんじゃないか、ってぐらいの顔でまた、俯いてしまった。



「それが……このザマだ。」



再び顔を上げ、



切なそうに母さんの遺影を見つめた。



「そんな俺が、お前たちを幸せにしてやることが出来るのか、自信が持てなかった。」



少し、俯き加減の横顔を、





涙が静かに伝い落ちた。

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