じんちょうげの花咲く頃
第2章 恋文
だから…だから、僕と母さんを…
その言葉を飲み込んだ。
「環は…アイツはずっと側にいるから、って見捨てないから、って言ってくれたのにな?」
小さく鼻を啜った。
「お父さん、ちょっと見せたいものが……待っててもらえますか?」
じっと前を見据えたまま僕は、母さんの遺影を見つめたまま動かなくなってしまった父さんに言葉をかけた。
母さん…いいよね?父さんに日記読んでもらっても?
だってあの日記は、
母さんが父さんに宛てたラブレターだと思ってるから。
だから、本人に読んでもらうね?
「お待たせ。これ、読んでみてください。」
「これは…」
「日記です。母さんの。」
「環の日記?」
「はい。」
恐る恐る伸ばされた綺麗な手のひらの中に日記を渡した。
「…いいのか?読んでも?」
「はい。」
文字を追う真剣な眼差し。
日本で仕事していた時は、
いつもこんな緊張感いっぱいの顔で仕事してたんだろうな?って思った。
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