じんちょうげの花咲く頃
第3章 返歌
何て答えたらいいのか、
どんな顔をしたらいいのか分からずにただ、俯き首を左右に振る。
「じゃ、俺はそろそろ…」
「え?もう?」
「うん。」
「だって、今来たばっかりじゃ…」
「…あんま、歓迎されてないみたいだし。」
父さんは、ほどよく焼けた肌に映える白い歯を見せつけるように笑った。
「おばあちゃん、虫の居所が悪かったのかも?」
「だとしても、あの怒り方は相当だぞ?」
「だったらなおさら、話した方が…」
「話して解決する問題ならそうするけど。」
「でも…」
立ち上がり、ポンポンと肩を叩くと、
再び遺影に向き直った。
「また……来るよ。」
「………。」
それは、僕に向けたものなのか、それとも、母さんに向けたものなのか。
「零。」
「は、はい。」
「おばさんのこと、頼むな?」
「うん。」
「零……。」
「はい?」
「色々とごめんな?」
「いえ……」
「じゃ、タクシー、待たせてあるから…」
「もう出国するの?」
「いや…今から、小うるさい舅ジジイんとこに行って今晩一晩泊まろうかと思って?」
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