じんちょうげの花咲く頃
第3章 返歌
そのまま寝てしまったのかどうか分からないけど、
僕と父さんの他愛のない会話は終わった。
もしかして…もしかしなくても、あの人の話を出しちゃいけなかったのかな?
せっかく、母さんのために帰国したのに、
母さんの前で、あの人とのこと、
詮索されたくなかったのかな?
父さんの、小さな背中を見ながらあれこれ思い悩んでいたけど、
そのうち眠ってしまっていた。
明くる朝、シロの声で目が覚めた僕は、
目覚ましをセットした時間がとうに過ぎていたことに驚き目を覚ました。
シロを散歩に連れていこうと外に出ると、
父さんがシロの相手をしてくれていて、
一緒に散歩に行かないか、と言って笑った。
「昨日、お前が聞いてきたことなんだけど…」
「…ごめんなさい。あんなこと…」
「いまだに気持ちの整理がつかないんだ。」
立ち止まった父さんに合わせて僕も立ち止まる。
「かれこれ、十年以上一緒にいる、って言うのに…いつでもいいから、って言葉に甘えてしまった。」
父さんは、目を細めながら、
朝の光を受けてキラキラと輝く海を見つめた。
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