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じんちょうげの花咲く頃

第3章 返歌



「父さん、その樹里さん、て人、日本を経つ前に母さんに会いに来てたじゃない?」


「うん。そうだったな?」


「母さん、今でも父さんのことが好きなのか、って聞かれてまだ、好き、って…」


「うん…」



照れ隠しをするように、父さんはしゃがんで、僕らの話に耳を傾けるようにその場に座ったシロの頭をそっと撫でた。



「多分、天国に行った今も好きなんだ、と思う。」

「…だったらいいな…?」


「だって、でなきゃ、とっくに再婚してるよ?」


「零、それはちょっと違うと思うぞ?」


「何で?」


「この辺の男じゃ、お前のお母さんみたいな女、もて余すからだよ。」


「そうなのかなあ?」


「俺も少しもて余してたぐらいだから。」


「じゃ、何で、父さんのこと好きになったの?」


「顔だろ?」


「ふふっ。やっぱり自分で言う?」


「うん。それしか考えられないだろ?」



父さんは立ち上がり腕時計を見た。



「戻る?」


「ああ。」


「父さんが突然訪ねていったら、叔父さん、ビックリするだろうね?」


「そう言えば、お前、好きな子いるのか?」


「えっ!?な、何?いきなり?」


「めぐむ、もう高三だったっけ?」


「め、めぐむちゃんは関係ないじゃん!?」


「ん?俺は何も言ってないけど?」



赤くなる僕に父さんは意地悪く笑った。


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