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じんちょうげの花咲く頃

第3章 返歌



「出来た…。」



ウェディングドレスの母さんと、



タキシードを着た父さん。



「………。」



母さんは綺麗だけど、



若い頃の父さん、て、何だか…






鉛筆で描いただけのものだけど、



あの頃の僕よりは上手く描けているはず。



僕は、母さんの写真の隣に、誇らしげにその絵を飾った。



その日の夜遅くのめぐむちゃんからのLINEで、僕の父さんの突然の訪問に、



叔父さんが父さんを独り占めしてしまって、ほとんど話ができず、つまらなかった、



との、ご機嫌斜めな内容に笑いが止まらなかった。





それから数日後。



夕方になって、少し涼しくなってきたから、おじいちゃんのお墓の花を取り換えてくると言って出ていったおばあちゃんの帰りが少し遅いような気がして、



もしかしたら、母さんのようなこともあるかも、と思い、家の鍵をかけ、共同墓地へと走った。



途中、白い軽トラとすれ違ったが構わずに走った。



「おい、アンタ、成海さんとこのコじゃないかいね?」


「え?」



聞き覚えのある声に思わず足を止めると、さっきの軽トラの窓から近所のおじさんが顔を出していた。



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