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じんちょうげの花咲く頃

第3章 返歌



「零くん、落ち着いて?成海さんも悪気があった訳じゃないんだから…」



取り敢えず今日は家に帰るとして、



叔母さんが金沢へ向かうタクシーに乗せてもらった。



「だって、あんな言い方…。」


「そうね。もしかしたら入院したこともあって、ちょっと気弱になってるのかもしれないわね?」


「それにしたって…」


「ねぇ、もしかして、お腹空いてない?」


「そう言えば…。」


「だからイライラするんじゃないの?」



と、叔母さんは、



ちょうど目についたハンバーグの専門店で少し早い夕食をご馳走してくれた。





「叔母さん、僕、いっそのこと、ほんとにこのまま東京に行こうかな?」


「え?」


「だって、よかれ、と思っていたことが、あんなにハッキリ否定されたんじゃ、何だか…」


「私は、そうなってくれた方が都合はいいけど、零くんが後悔しないかな?と思って?」


「それは…」


「亡くなったお母さんも生前はよく言ってたし。その方が安心できる、って?」


「そうですか…」


「無理に、とは言わないけど考えてみてくれないかしら?」


「は、はい…。」



とは、返事をしたものの、



まだ、心のどこかで、踏ん切りをつけられないでいた。



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