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じんちょうげの花咲く頃

第4章 新しい季節へ…



それから早いもので半月後。おばあちゃんの退院する日がやってきた。



何日の何時までに迎えに来てほしい、と、言うので、



前日の夜のうちにまた東京からわざわざ叔母さんが来てくれていて、



当日の朝、宿泊先の金沢のホテルから直接病院へと来てくれた。



「澪さん、世話をかけてごめんなさいね?」


「いいえ?そんなこと。気にしないでください。」


「それはそうと、娘さん…めぐむちゃん、もうすぐ大学受験やったね?」


「ええ。まあ。」


「どんなとこ受けるか決まっとるん?」


「本人は一応、都内の女子大、とか、言ってますけど?」


「あらま、東大とかじゃないんかいね?」


「とんでもない。うちの子、そこまでじゃありませんから。」


「………。」



と、笑い合う二人の間に入っていけない。



まるで、ここにいないかのような疎外感。



透明人間にでもなったみたいだ、と思いながら二人の後をついていく。



「零くん、再来年受験でしょ?」


「え?は、はい。」


「やっぱり、金沢の大学、受けるのかしら?」


「まだ、そこまでは…」


「…こんな田舎の大学出てもたかが知れとる。東京行かんとダメや。」


「だから、そんなことない、ってば!?」



おばあちゃんは、振り返って僕の手を強く握りしめた。



「零ちゃん、意地はったらいかん!」


「意地なんかっ…!」


「何回言わせるんや!!あんたのためを思って言うとるんが分からんか!」


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