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じんちょうげの花咲く頃

第4章 新しい季節へ…



気がついたら、



僕はある人たちが住んでいる家の前に立っていた。



その家は、会社を経営してる人が住む家に相応しく、



タクシーの窓から平垣が見え始めてから門扉が見えてくるまでゆうに五分以上の時間を要するぐらいの大きさがあった。



インターホンを押すと、年配の女性の声がして、



門扉が開いた、と思ったら、見慣れた人物が扉の向こうから顔を覗かせた。



「零…くん?」


「すみません、突然…」



突然の僕の訪問に、叔母さんはまるで幽霊か何かを見たかのような表情のまま駆け寄ってきた。



「本当よ?どうしたの?こんな時間に?」



明かりの下で確かに僕であると確認すると、嬉しそうに手を握ってきた。



「とにかく、玄関で立ち話も何だから上がって?」



と、満面の笑みで家の中へと迎え入れてくれた。



「でも、ほんとビックリしたわ。まさか、家に来てくれるなんて?」



にこにこしながら、叔母さんは僕の目の前にカップを置き、自身も向かいに座った。



「で、こんな時間に突然やって来た、ってことは何か大事な用があったからなんでしょ?」



僕はコーヒーを飲みかけて、そのまま一口も飲まずに、静かにカップをソーサーの上に置いた。



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