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じんちょうげの花咲く頃

第1章 じんちょうげの花咲く頃、君と出会う。



僕が母さんと住んでいる家に帰ると、何故か漁協の組合長の奥さんと、



落ち着かなげにしているおばあちゃんが茶の間で話し込んでいて、



僕の姿を見ると側に駆け寄って来た。



「おばあちゃん、母さんが病院、って?」


「話は後にして、はよ、病院、行こ?な?」



こうして僕は、



漁協の組合長の奥さんが運転する車に乗って、



母さんがいる、という、総合病院へと向かった。





でも………





「つい先ほど死亡が確認されました。」


「えっ?何やて?」





死んだ?今、死んだ、って…



途端、今、目の前で起こっていることが現実味を無くしてしまう。




「アンタ、ちゃんと確認したんか?」



激しく詰め寄るおばあちゃんに、担当した若い男の先生が淡々と答えた。



「はい。ですから、こちらに運ばれてきた時にはもう…」


「もう、ダメやった、言うんか!!」



その場に一緒にいた組合長の奥さんが、



声をあげ泣き崩れた。



僕は、と言えば、



今、僕の目の前で何が起こってるんだろう、って思えるぐらい現実感が全くなくて、



すべてが、



色を無くしていった。


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