じんちょうげの花咲く頃
第1章 じんちょうげの花咲く頃、君と出会う。
このあと、先生が何を言ったのかをはっきり覚えていない。
記憶に残っているのは、
『お母さんが亡くなった。』
と、聞いたところだけだった。
死因は窒息死。
シロの散歩にでかけたまま、シロだけが戻ってくるという奇妙な状況に不安を覚えた成海のおばあちゃんは、
近所の人たちに協力を仰ぎ、母さんを探してくれた。
おばあちゃんは心当たりをくまなくあたってくれたが、
母さんが立ちよった形跡もなく、
いよいよ警察に届けようか、とおばあちゃんや近所の人たちが相談をしていた矢先、
母さんが病院に搬送された、との連絡が入った。
あとで聞いた話だけど、
母さんは、
シロの散歩コースの道の脇にある田んぼの中で、うつ伏せに浮いていたという。
春といえどまだ日没が早くて、
外灯も疎らにしか付いていないような道の脇。
よもや、そんなところに人が浮いているなんて誰も想像できなかったんだろう。
発見された時にはすでに母さんは心肺停止の状態だったという。
しかも、
体には強い衝撃が加えられたことによる打撲痕もあり、もしかして、車か何かに撥ね飛ばされ田んぼに落ちてしまったのでは、と言われていた。
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