マリア
第8章 追奏曲
和也side
鉄製の古い扉を閉めてアイツが出ていく。
薄暗く、汗とホコリにまみれた場所に一人取り残された俺は、
上着のポケットから取り出したティッシュで、己の欲で汚れた箇所を丁寧に拭き取った。
…いつものアイツと違う。
いつものアイツなら、
俺のああしてほしい、こうしてほしい、などと言う要望なんて無視して、
ただ闇雲に突きまくってただけなのに、
『ここがいいの?』
って。
初めてだった。
アイツとセックスしててキモチいい、なんて感じたのは。
「くくくっ…。変われば変わるもんだね?」
乱暴に脱がされたズボンと下着を穿きながら忍び笑う。
アイツもようやくサルから人間に進化できたか、
なんて、一人ごちながら。
大野智…
アノ人、なかなかいい仕事するじゃない?
さすがは、俺のメガネにかなっただけのことはある。
その、計算してないのに、計算され尽くした純真無垢なところを利用してさ、
もうひと仕事、して欲しいんだよね?
あのさ…
一人、壊して欲しい人がいるんだよね?
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