マリア
第16章 迷走曲
和「どうして?」
智は答えることなく頭からシーツを被り、白いミノムシと化した。
そして、松本先生がやって来るまで、
ぴくりとも動かなかった。
「二宮、ちょっと…」
俺は部屋から出ろ、と言わんばかりに二宮に目で合図した。
「雅紀のやつ…マジで智のことヤりやがって…」
唇をぎゅっと噛み、壁を拳で打ち付ける真似をしてみせる。
和「…ごめん。俺のせいで…」
俺は、項垂れる二宮の襟を掴み、その体を壁に思い切り押し付けた。
「…まったくだよ!?黙ってろ、って言ってたヤツが聞いてあきれる。」
和「ホントにごめん…。」
俺が手を離すと、二宮の体は項垂れたまま、壁に寄っ掛かった状態でずるずるとその場に崩れ落ちていった。
そして、思い出したように顔をあげると突拍子もないことを口にした。
和「俺…大野さんに謝らなきゃ。」
「謝る?」
和「大野さんに俺らのことを話したうえで謝るんだよ!?」
と、ドアノブにかけた二宮の手を制するように、俺はその手を掴んだ。
「そのことなら、もう知ってる。」
和「え?」
「俺が智に話した。お前とデキてる、ってこと…」
和「じ、じゃあ、なおさら大野さんに謝んないと…」
「謝ってどうすんだよ?」
和「ど…どうする、って…?」
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