マリア
第22章 遁走曲
和也side
「ここ…は…?」
兄貴と一緒に病院に来た俺は、
兄貴とは別の病室で目が覚めた。
いつのまにか、俺の腕には点滴の管が取り付けられていて、
側でばあちゃんが俺の顔を心配そうに見ていた。
「気がついた?」
「あ……兄貴…は?」
「そ…それが…」
体を起こそうとする俺を、ばあちゃんが制する。
「そんな体でどこ行くの?」
「兄貴…兄貴は?どこにいるの?どうなったの?」
「潤さんは…」
兄貴は助かった。
でも、まだ、ベッドで眠ったまま……
「え…今、なんて?」
「もう、一生歩けないそうだよ?」
ばあちゃんは直接その話を聞いた訳じゃなくて、
俺の父親に一言詫びを入れようと訪れた病室の前で偶然聞いてしまったのだ、と告げた。
…穏やかな顔。
雅紀の部屋で見た顔は、激しい痛みのあまり物凄く怖い顔してたけど、
今は、嘘みたいに、穏やかで、綺麗な顔。
潤「…僕の顔に何かついてる?」
その、綺麗な顔に触れようとして思わず手を引っ込めた。
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