マリア
第6章 練習曲
智side
翔「…ムリだって、そんなこと。」
僅かに怒気を孕んだ翔くんの言葉に思わず身構えてしまう。
翔「ただでさえヤったことないんだから優しくヤれ、って言われても出来る訳ないだろ!?」
「ご、ごめん。そう…だよね?」
どうしよう!?翔くん、本気で怒ってる。
翔「その、優しくヤる、ってやり方を智くんが手取り足取り教えてくれる、ってんなら話は別だけど?」
「え…?」
聞き間違いか、
と、一瞬、思わず聞き返してしまう。
翔「あっ……」
翔くんは、しまった、という顔で口元を手で押さえた。
翔「帰る…」
小さな声でそう言うと、翔くんはまるで逃げるように帰っていった。
僕は、翔くんが残していった言葉の意味を咀嚼しようと思う以前に、
翔くんを怒らせてしまったことばかりが気になってしまって、
どうやったら翔くんが許してくれるかばかりを考えていた。
礼「帰ったの?翔くん?」
ベッドから半身起こし、こちらを見ていた礼音の顔色はもうすっかり元に戻っていて、
発作があったなんてウソのような穏やかさでこちらを見ていた。
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