マリア
第7章 恋慕曲
一気に階段を駆け降りていって、校庭に降り立った時、
あの子は泣きそうな顔で俯き校門に寄りかかっていた。
彼は大きく息を吐いたあと、壁から体を起こし、そのまま校舎に背を向け歩き出した。
声をかけるのも憚られたけど、慌てて駆け寄りその、一見華奢な肩を掴む。
すると、その子の体はガクン、と後ろに強い力で引っ張られるみたいに傾いた。
「ちょ…まっ…待って?」
彼が止まってくれたことを確認してから、息を整える。
智「誰…?あ…!君は…翔くんの…?」
訝るような顔もなかなかだ。
思わず、見惚れてしまう。
「君、翔ちゃんのお友だち…だよね?」
智「そう…だけど?何か?」
また、俯いて息を整えてから話しかける。
「もしかして…翔ちゃん、待ってんの?」
智「え…?あ…うん。」
彼は目線を落としながら 小さくこくり、と頷いた。
智「でも、約束してる訳じゃないから…それに、翔くん、部活なんだよね?」
「そうだね?」
やっぱり出直すから、と、
踵を返した背中をまた、呼び止める。
「あのっ!?良かったらさ、翔ちゃん二人で待ってようよ?」
智「え?でも…」
「俺、このあと、翔ちゃんと約束してんだよね?」
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える