
夏夜の煙
第1章 1人で吸うか、2人で吸うか
次の日。
櫻井先生の顔が頭によぎったものの、いつも通り登校はせず、昼過ぎまで寝た。
そこから、もぞもぞ起き上がって、適当に買ってあった菓子パンをつまんで、シャワーを浴びて。
夕方になってから、スクーターに乗って家を飛び出した。
いつも通りの空き地まで走って、愛車を止めると。
「なんで…いるんですか……先生。」
「てへ♡」
タバコを吸いながらヤンキー座りしている櫻井先生がそこにいた。
そんな状態で小首を傾げて『てへ♡』なんて言われても気色悪いだけで。
ため息をひとつついて、
「ご苦労さまでした。では。」
そう帰ろうとすると、
「まあまあ待ちなさいよ、和奏ちゃん。」
先生の傍らにあったアイスボックスから、ん。と差し出されたのは、
「ハーゲンですか…」
「JKは好きなもんだろ?」
「そうですね。」
ここで帰ったら先生もアイスも可哀想だし…と自分に言い訳して、先生の隣に座った。
「イチゴとバニラ、どっちがいい?」
「イチゴで。」
「ほい。」
と、私に手渡すと、自分はバニラを手に取って食べ始めた。
「タバコの後によく食べれますね…」
「スイーツは別格、だろ?」
にや、と笑う先生に、まるで同い年の不良仲間かのように錯覚してしまう。
潤以外の人と話すのなんか久々だ、というのに気づいて自分でも驚いた。
そんな私に、んで、と先生は本題に触れてきた。
「和奏ちゃんは今日何してたの?」
「寝てました。」
「なぁ…昨日の俺の話聞いてただろ?人助けだと思って来いや……。」
「先生は助けたいと思えないです。」
「嘘だろ、外面にだけは自信あるのに!!!」
はあ、と肩を落とす先生に、思わず吹き出してしまった。
「もう外面なんて私の前じゃないじゃないですか笑」
ふふふ、と笑う私を一瞬、驚いたように見つめて、
「なんだよ…ちゃんと年相応に笑えんじゃん。」
くしゃ、と笑って、
ぽん、と私の頭で手を弾ませた。
「ん、なっ……//// 」
思いもしなかった行動にビックリする私を、
「美味かったな。じゃ、また明日。」
そう言って、置いて帰って行った。
