スパダリは1日にして為らず!
第1章 それは何かの間違いです
「…こんなもん、かな」
部屋の中をぐるりと見渡して、決して片付いたとは言えない状況だったが区切りを付けた。
山積みの洗濯物を慣れない手付きながらも必死に畳んで、おおよその種類別に分けただけでも悠季にしたら上出来だ。
それと
悠季の隣でニコニコしている遙斗がかなりな戦力になったのが、嬉しい誤算だった。
書類だか事だか分からない紙類を「バツがあるのはこっち」と記号のあるなしで分けて揃えてくれた。
そして洗濯物に苦戦していたら、歪な悠季の畳んだそれを真似た遙斗の方が綺麗に畳めていた。
悠季の手順を見ながら「おりがみみたいー」と畳む遙斗は、幼児とは思えないくらい器用だったのだ。
それでも簡単な靴下を揃えて履き口を包むのが出来なかったりと可愛らしいとこもあり、初日だと言う緊張はあっという間に消え去っていた。
「お腹が空いた」と遙斗が訴え、さすがに人様に食べさせる料理だけは挑戦したくなかったので、遙斗と手を繋いでコンビニへ向かった。
幼児にコンビニ食、もかなり迷った。お菓子ならともかく弁当類はどうなのだろう。
これくらいは、いくら子どもを知らない悠季でも躊躇する。
この時悠季はすっかり忘れていた。早川がご飯代を置いて行った事を。自分の所持金でファミレスはちょっと痛い。
それに考えてみたら給料の話はしていないし、住み込みならそれなりに引かれてしまうのも考えられる。
雇い主が帰ってきたら素直にコンビニのご飯を食べさせた理由と給料の話をしよう、と一人ごちて悠季は遙斗とコンビニの中に入って行った。
「あ、おにいちゃん!これね、おいしいんだよ!」
悠季の手を引っ張って、目をキラキラさせながらこれは甘い、これはね…と悠季以上に弁当に詳しい遙斗に「いいのか、これ」と不安を覚えてしまったのは悠季の気のせいではないだろう。
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