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スパダリは1日にして為らず!

第1章 それは何かの間違いです


***

悠季に膝抱っこされながら絵本を読んで貰っていた遙斗が、玄関からのチャイムにぴくりと反応した。

「ねぇ、パパかな?」
絵本から顔を上げた遙斗が悠季を見る。

「多分そうだと思うよ」
壁の時計を見上げれば、朝に早川が伝えて行った帰宅予定の時間と大差がない。遙斗の言う通り、早川の帰宅だろう。

「ハルくん、お出迎え行こうか」
「いく!!」

ぴょん、と膝から降りた遙斗が急かすように悠季を見つめる。
悠季がふざけて両手を伸ばし「抱っこする?」と聞くと、てっきり断るだろうと思った遙斗はそれはもう嬉しそうに「するーっ」と再び飛び付いた。

ー…ああ、なんか子ども…つかハルくん、凄い可愛い

こんなに可愛いなら、この先も上手くいけそうだ。…なんて事を考えながら遙斗を抱き上げ、悠季は玄関に足を進めた。

「おかえりなさい」
「パパおかえりーっ」
「えっ、あ、…た、ただいま」

靴を脱いで下を向いていた早川は、声を掛けられると思ってなかったのか驚いたように顔を上げて、次の瞬間にはふわりと嬉しそうな笑顔を2人に向けた。

ー…うわ、やっぱりイケメン

男から見ても憧れに値する顔の笑顔は破壊的だ。悠季は思わず赤くなった頬を隠すようにギュッと遙斗を抱き締める。

「おかえりって言われるの、いいもんだねぇ」
「そ、ですか?」
「うん。何だかあったかい」

暖かい、と言う感覚は良く分からない。けれどそんな事で喜んでくれるなら、これも仕事の1つに加えよう。

「ハル、抱っこされてるの。…ごめんね、重いでしょ」

そう言って早川はハルに「おいで」と手を伸ばす。だが、遙斗はあっさりと「イヤ」と首を振った。

「ガーン!」と言う擬音が聞こえるような顔をした早川に悠季が思わず吹き出す。だって、首を振りながらも遙斗の笑顔はそのままだ。

つまりはわざとそう言っているだけなのに、本気でショックを受ける早川が面白かった。

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