スパダリは1日にして為らず!
第1章 それは何かの間違いです
・・・一体何がどうしてこうなった?
大きなボストンバッグを抱え、ごく普通の一軒家…にしてはなかなか洒落た佇まいの門を前にした早川悠季はそこを見上げながらため息を吐いた。
***
自分には関係ないはずのトラブルに巻き込まれ「こっちから連絡するまで暫く休んでいいから」といきなり実質上のクビを言い渡されたのは3日前。
納得なんて出来ないけれど、聞く耳なんぞ持たない店長は悠季の言い分を全て却下。言ってしまえばそれに託つけた人員削除だ。
特に愛想がある訳でもなく、おべっかを使う事もしないが誰ともあまり打ち解けようともしない彼なら、切っても後々揉める事もないだろうと舐められた結果とも言える。
そして店長の考え通り、悠季は納得してはいなくても楯突く事もせずに少ない私物をまとめ、せめてもの抵抗で少しだけ乱暴に事務所のドアを閉めただけにとどまった程度だった。
アパートに戻り、半ばふて寝の状態で1日目は過ぎた。
2日目には落ち着きを取り戻し、生活を考えて次のバイトを探さなければと思い立った。
そして3日目の今日。
多少の貯金はあるにしても、大した額じゃないそれがすぐに底を付くのは目に見えている事に不安を覚え、慌てて無料の求人誌をコンビニから貰って来たところだ。
「ここから近いとこ…」
1人ブツブツと呟きながら雑誌をめくる。
職種なんて選んではいられない。生活費の繋ぎになれば今はそれでいい。
パラパラと目で追いながら、偶然目についた1つの〈急募!〉の募集欄。
内容は宅配会社の夜間帯の荷物の仕分け。時給は深夜手当て込みで1250円となかなかの高値だ。条件も悪くないし何よりこのアパートから自転車で5分の見知った場所。
「いいじゃん、これ」
悠季はにんまりと口角を緩め、受かるかどうかはともかくとして、すぐに連絡先となっている携帯番号に電話を掛けた。
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