スパダリは1日にして為らず!
第2章 1つ1つ
寝食を共にすると、仲良くなるのは存外早い。
初めからやたら遙斗が懐いてくれたと言うのもあるが、2日目には「一緒に寝る!」と駄々を捏ねた。
この行動にも早川は驚きを見せていたが、悠季からしてみれば最初から懐いていた分この状況は想定内である。
けれどもこれが誤算でもあった。
「ーー…っ!!うそっ?!」
気持ち良く目覚めてのんびりスマホの時間を見て、悠季は慌てて飛び起きた。
時刻は8時40分。
何をどう見返しても、ついつい電源を落として入れ直してみても、そのあり得ない時間は間違っている訳がない。
早川は朝は遅くとも8時には出勤すると言っていた。
家事が出来ない分、せめて見送りくらいはと言った矢先にこれだ。
その理由は言い訳にもならないが遙斗である。
子ども特有の暖かいぬくもりは予想以上に気持ち良くて、いつもはアラームなんかなくても起きられると言う過剰な自信が仇になった。
あまりに暖かくて、気持ち良くて、うっすら目が覚めてはまた微睡みに負けた。
ー…やっちゃったよ。
ガリガリと頭を掻きむしり、まだくうくうと眠る遙斗を起こさないようにゆっくりと悠季が布団から抜け出す。
ー…実はまだいたりして。
なんて、ほんの少しだけ期待しつつ部屋を出てリビングに向かって。
「…いるわけないよな」
リビングのドアを開け、ちょうど良い温度に設定された室内を見回してがっくりと項垂れた。
多分、と言うか間違いなく、この快適な温度は早川が調整してくれた筈だ。
お金を貰う以上、これではマズイ。
「ん、あれ?」
そんな事よりも。
「お金」で思い出した。
住み込みとして雇われたら、時給ってどうなるんだろう。
きっちり9時5時などと言う制限がない場合の線引きは?
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える