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「じゃあ、俺が可哀想ってあれの意味は……？」

「それは……」

それを知ってしまったら二人とも……。

「……深夜は、大丈夫？　いまならまだ…」

そうだ。ここで断ってくれ。真実を知ってしまったら……。

「……言ってくれ」

駄目か。でも、真実を知ることも必要なのか？ それでも知らなくていいことも…。俺は、どうすればいいんだろ？ 蒼時さん…。あなただったらこういう場面で迷いなく決断するんでしょうね。たとえその選択がどんなに難しいものでも。笑いながら、みんなに負担をかけないように……。

「わかった。……深夜、君は自分の母の前の旧姓を知っているか？」

「旧…姓……？」

「君の母の旧姓は……幹崎だ…」

「それは、一体……」

「つまり、俺らの母親は同じってことだ。んでもって俺らは義兄弟」

「……」

「母さんは俺の父さんにレイプされたんだ。そして、母さんと父さんは兄弟だった。だから、旧姓がおんなじなんだ･･････。そしてそのあと、おまえの父さんが母さんを俺の父さんから助けた。そしてそのすぐあとだ、深夜が生まれたのは」

ああ、やっぱりショックだったか。

「久保田……。大丈夫か？」

まだ、真実を伝えるのは早かったのかもしれない……。

「わけわかんねぇ」

「深夜……」

こいつがこんな、悲痛な顔…。俺は、そのことを知っていた負い目からなのか、俺の中の残っていた良心からなのかわからないが、気がついたら名前を呼んで少しでも落ち着くようにと、深夜を抱きしめてた。

「ほん…だ……？」

こいつが動揺してるのがわかる。…大丈夫。…大丈夫。

「黙ってろ」

「ごめん。ショックだったと思う」

「だい…じょうぶだ」

無理…してるよな。……やっぱ。

「なぁ、幹崎。おまえはあの事件のことを知ってるのか？」

深夜の唐突の質問に驚きはしたがいつもの顔に戻りつつあることを顔をみてわかった。どうやら落ち着いてきたらしい。

「あの事件？　……ああ、あれか。知ってるよ」

「じゃあ、なんで仙田 龍のおまえは知らないんだ？」

「俺は、俺らは、記憶の共有がされないんだ。いや、幹崎である時の俺には仙田である時の俺の記憶も共有されるんだけど仙田である時の俺には幹崎である時の俺の記憶は共有されないんだ」