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短編集

第15章 『或る殺人の風景』

クラッシックが流れている。

ショパンか。

曲名までは知らない。

ただあいつが好きだった曲だ。

俺の趣味じゃない。

これも復讐の一部って訳だ。

はは。

―どしゃり。

床に顔面から倒れ込む。

意識は混同として、体を制御できない。

…かあっがっ。

床に当たった包丁が胸をえぐる。

反射的に仰向けになる。

板間の床は冷たい。

そんな感覚に鋭敏なのが、理解できない。

即死のものではない。

ただこのままでは出血によって死ぬ。

血だまりが広がっていく。
飛び散った血は鮮やかな赤から、どす黒く色を変えて固まりはじめている。

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