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短編集

第10章 『祖母の夏』

男の子は話せなかった。

男の子は尻尾が生えていた。

男の子は油揚げが好きだった。

男の子はどこの誰だかわからなかった。

彼女はそれでも男の子と一緒に遊んだ。

学校の帰り道、どんぐりを並べて、わらびを摘んで、あけびを剥いて、石飛をして。

毎日毎日、話せなくても一緒にいることが大切だった。


その頃の彼女は、狐憑きのはずれもんだった。

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