テキストサイズ

遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

 雷は幼い頃から苦手なものの一つである。
「私ったら、ついてない。ひと月ぶりに町に出たのに、これだもの」
 梨花は顔を膝に伏せながら、つい洩らした。
 と、揶揄するような声が頭上から降ってきた。
「そうか? 私は、このような場所で思いがけずそなたに逢えて、この雷にも感謝したいと思っているのだが」
 あ、と、梨花が伏せていた面を上げる。
「若さま」
 このような心細い状況なので、余計に嬉しかった。
「そうか、そなたも私に逢えたのがそんなに嬉しいのか!」
 南斗は少年のような無邪気な笑みを見せた。
「全く、初雪ならぬ初雹だな」
 南斗は腕組みをして、眼を眇めながら空を眺めている。その飄々とした様は、見ている梨花までつい緊張感が弛んでしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ