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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第4章 求め合う心

「ホホウ、海棠は書物に興味があるのか?」
「はい」
 林家の父は女が学問を積むのを好まなかった。梨花が兄ですら読解できない難しい書を歓んで読んでいるのを眼にする度、顔を曇らせていた。
 消え入りそうな声で応えた梨花に、南斗は笑顔で続けた。
「流石は代書の仕事をする兄上を持つだけあるな。学問を真摯に追究するその気概は、兄上ゆずりなのだろうな。羨ましいよ」
 あからさまに褒められて、梨花の頬が紅潮した。南斗は、女が本を読むことに偏見はないらしいと知り、どこか安堵する。
「お師匠さま―なのですか。では、若さまも医学を志されて?」
「いや、頭の悪い私が医学なぞ学べるはずがない」
 南斗は梨花の無邪気な質問に苦笑で応えた。

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