遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第4章 求め合う心
「そろそろ、帰ろうか」
雨も殆ど止んだようである。空は白っぽい明るさを取り戻し、雲間からは時折、陽の光も差していた。
西の空の端が僅かに茜色に染まっている。
往来にも少しずつ人が増えてきた。ひとめで裕福な家の若さまだと判る南斗と粗末なチマチョゴリ姿の梨花が仲睦まじく肩を並べて歩いてゆく。もし梨花が南斗と同じように絹のチマチョゴリを着ていれば、美男美女、まさに似合いの恋人同士に見えたに相違ない。
しかし、いかにせん、梨花の粗末な衣服では、到底、南斗とは釣り合わないどころか、かなり不自然だ。
二人の姿に、時折すれ違う人が意味深な視線をちらりと投げていった。
だが、心ない視線に気づきもしない梨花は、南斗と二人だけの刻を過ごす幸せに浸っていた。
雨も殆ど止んだようである。空は白っぽい明るさを取り戻し、雲間からは時折、陽の光も差していた。
西の空の端が僅かに茜色に染まっている。
往来にも少しずつ人が増えてきた。ひとめで裕福な家の若さまだと判る南斗と粗末なチマチョゴリ姿の梨花が仲睦まじく肩を並べて歩いてゆく。もし梨花が南斗と同じように絹のチマチョゴリを着ていれば、美男美女、まさに似合いの恋人同士に見えたに相違ない。
しかし、いかにせん、梨花の粗末な衣服では、到底、南斗とは釣り合わないどころか、かなり不自然だ。
二人の姿に、時折すれ違う人が意味深な視線をちらりと投げていった。
だが、心ない視線に気づきもしない梨花は、南斗と二人だけの刻を過ごす幸せに浸っていた。